魂は…⑤

2005年の桜は3月下旬から咲き始め、4月1日には、ほぼ満開になった🌸

叔母の身体と医療機器とがうまく噛み合わなくなり、黄疸が出始めた。時間の問題だったが、私達は希望を持ち続けた。

3日の朝9時頃、母から連絡が入った。「もう、もたないので病院に来て欲しい」と。

 堪えながら待合室で待つと、叔母の夫、息子二人が現れたが、お互い言葉を発せずにいた。

叔母の大親友も呼ばれて来たが、悲しみに埋もれていた。

私達は言葉が無いままそこにいた。

私は叔母が居る病室の方の窓を見つめ、ずっと叔母の事を思っていた。桜の花びらが4階の窓越しにまで舞っていた。

桜吹雪の合間から叔母の声が聞こえた。

「ねぇ、なんでみんな集まっているの?

泣かないで❗私はここにいるよ❗」と。

私は悲しすぎて叔母の声が聞こえたのだと、幻聴だと思った。

11時50分、叔父と息子達が呼ばれ病室に入った。しばらくして、叔父が待合室に戻ってきた。そして「皆さま、ありがとうございました。永遠の眠りにつきました」と憔悴した声で伝えてくれた。

悲しすぎた。叔母の親友が「どうして先にいくのよ」と泣き伏した。

「泣かないで❗ここに居るから」と叔母の声を代弁している私。でも驚きはなかった。

叔母は桜吹雪に舞っていた。「悲しまないで❗私は楽になったのよ。皆が悲しんでると私は悲しい」と叔母の声がした。私は泣き伏した親友に同じ言葉を掛けたが、他の人には話さなかった。(つづく)


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桜を見ると思い出す🌸